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高可用性の実現のために物理サーバを選択
オンプレミスで運用していたシステムのクラウド化や、クラウドを前提としてインフラを検討する「クラウドファースト」の考え方が浸透しつつあります。イニシャルコストを低減できるほか、迅速に利用できるメリットがあり、またハードウェアのメンテナンスが不要になるといったクラウドのメリットを考えれば、クラウドが浸透するのは自然な流れだと言えるでしょう。ただ昨今では、特にエンタープライズの領域で物理サーバに回帰するケースがあります。その背景にある理由の1つとして考えられるのが、そのシステムに対して求められている可用性の確保です。
先日、グローバルでサービスを展開しているパブリッククラウドにおいて大規模障害が発生しました。問題が発生したのはストレージサービスで、クラウド上のリソースに接続できない、あるいは遅延が発生するといったトラブルが起こっています。また同サービスは同じ月に複数回の大規模障害が発生しています。もちろん、オンプレミスで物理サーバを運用しているケースでも障害が発生する可能性はあり、クラウドだから可用性が低いというわけではありません。ただ物理サーバであれば、内部で使われているパーツの冗長化などにより、ユーザーが求める信頼性を確保できるメリットがあります。
具体例として挙げられるのがNICの冗長化です。サーバに2つのNICを搭載し、アクティブ側のNICに障害が発生したときは即座にスタンバイ側に切り替えるよう設定すれば、NICに障害が発生しても通信を継続することが可能となります。さらに、それぞれのNICの接続先を別のスイッチにすれば、スイッチ障害に対応することも可能です。昨今では、ハードウェア障害発生時にその上で動作している仮想サーバを別のハードウェアに移動して稼働を継続するなど、仮想化技術を使って可用性を高める例も増えていますが、ダウンタイムを最小限に抑えることを考えるのであれば、ハードウェアそのものの耐障害性を高める仕組みは欠かせません。こういった部分まで考えたとき、パーツ単位で二重化できる物理サーバには一定のアドバンテージがあると言えるでしょう。
SSDの活用でシステムのボトルネックを解消
物理サーバを選ぶ理由として、パフォーマンスの追求も挙げられるでしょう。特に現在のシステムにおいてボトルネックとなりやすいのはストレージであることから、その解消のために高速なSSDを搭載した物理サーバを使うといったケースは珍しくありません。パフォーマンスを追求しつつ仮想化のメリットを採り入れるため、物理サーバと仮想サーバを使い分けることもあります。たとえばWebシステムを構築する際、フロントエンドのWebサーバには仮想サーバを使って柔軟性を確保しつつ、パフォーマンスが求められるバックエンドのデータベースサーバには物理サーバを使うといった構成などが考えられるでしょう。
このように、NICの二重化やSSDの活用など、用途に応じて細かく構成要素を検討できるのは、物理サーバならではのメリットだと言えます。昨今では、ネットワークを冗長化した「エンタープライズモデル」や、PCIe接続のSSDを搭載する「高IOPSモデル」などをラインナップするリンクの「ベアメタルクラウド」のように、用途に合わせて物理サーバを選択できるクラウドサービスも登場しています。システムのインフラを選定する際、可用性やパフォーマンスの観点からも検討し、自社にとって最適なサーバは何かを考えたいところです。