インフラ自動化とは? 運用業務の効率化を実現するアプローチを解説

2022.08.01

DXが推進され、システムのクラウド化が進展する中、それらを支えるIT基盤にも柔軟な変化やスピードが求められています。その一方でIT人材の不足は深刻化しており、リソースが十分でない環境でのインフラ運用業務の負荷は大きな課題となっています。そこで注目されているのがインフラ自動化です。手動で行っていた運用業務を自動化することにより、効率化をはじめさまざまなメリットが期待できます。本記事ではインフラ自動化の概要やメリット、アプローチ方法について解説します。

インフラ自動化とは

インフラ自動化とは、ITシステムを支える基盤であるハードウェアやソフトウェア、ネットワーク、ストレージといったインフラ環境の構築・運用・管理業務をなるべく人の手を使わず、テクノロジーによって自動化することです。運用担当者の作業負荷軽減やスピードアップ、人的ミスの削減、コスト削減などを目的としています。

インフラ自動化が求められる背景

インフラ自動化が求められる背景としては、企業におけるITシステム活用の拡大と労働人口の減少に伴う人手不足が挙げられます。既存システムの維持や刷新に加え、新たなITシステムや技術の導入、データ活用やセキュリティ対策など、業務は増加する一方であるにもかかわらず、人手不足は今後さらに深刻化することが見込まれています。そのため、今まで人が対応していた業務を引き続き人手で行っていくことは困難であり、より効率的かつ安全なシステム運用を実現するための手段として自動化が求められているのです。

自動化できるプロセス

インフラ運用担当者が実施する業務の中で、主に以下のようなプロセスを自動化することができます。

インフラ構築

インフラ構築のための設計書をコード化し実行することで、記述通りの処理が行われ自動で構築が完了します。たとえば大量に同じ構成のサーバーを構築する必要がある場合に、手作業では多くの時間がかかり、人的ミスも発生する可能性が高くなります。自動化することにより、スムーズかつミスのない構築が可能です。

インフラ構成管理

構成管理とはハードウェアやソフトウェアなどのITシステムを構成する要素やライフサイクルを管理し、インフラ環境の維持を行うことです。インフラ環境を維持するうえで、作業の共有や効率化、属人化防止のために構成情報の管理や作業手順書の作成などが必要になります。これらを手作業ではなくツールを利用して自動化することで、工数の削減や迅速な情報のアップデートが期待できます。

システムメンテナンス

運用業務の中で、本番環境の設定変更やパッチ適用など、夜間・休日に行わなければならないメンテナンス作業は頻繁に発生します。サーバが多数存在する環境で手動で作業をする場合、関係者との調整含め作業工数が嵩みます。しかしツールを利用すれば、パラメータシートや手順書、テスト仕様書を置き換えた定義ファイルを作成してまとめて実行することも可能です。自動化することで、人による作業ミスを防いで対応を迅速化し、関係部署/メンバー間でのスケジュール調整などの工数も削減できます。

インフラ自動化のメリット

インフラ運用を自動化することによって得られる具体的なメリットについて解説します。

運用業務の効率化

インフラの構築作業やメンテナンスを自動化することで、手動で作業を行うよりも工数を削減できます。インフラの構成管理の自動化やコード化により、過去に実施した作業の再現や汎用的な環境の構築もスムーズにでき、効率化につながります。運用に関する手間を減らすことで、事業発展のためのコア業務に注力する人材を増やすことも可能です。

人的ミスの削減

手作業によるミスはどうしても起こるものですが、ツールによって自動化することで人的ミスを大幅に削減できるでしょう。システムの規模が大きくなるほどミスが起こる可能性は増えるため、自動化の重要性は高くなります。品質向上にも直結するでしょう。

ITコストの削減

システム運用を手動で行うには、多くの時間と人手が必要です。また運用担当者を確保するための採用・教育コストも欠かせません。自動化を実現することで、運用業務の負荷の多くを軽減できるためコスト削減につながるでしょう。

インフラ自動化を実践するためのアプローチ

実際にインフラ自動化を導入するにはどうしたら良いでしょうか。具体的なアプローチ方法を紹介します。

自動化する業務の整理

まず、運用業務のうち自動化すべき部分を洗い出すために業務全体の整理を行います。業務の整理をしないまま一部分のみを無理に自動化してしまうと、自動化の処理も複雑化しがちで、その後の引き継ぎや修正が困難になってしまいます。そもそもどこまで自動化が可能なのか、人が携わるべき領域と携わらないほうが良い領域をどのように切り分けるのか。人がやるべき業務から、機械に任せるべき単純で汎用的な業務を切り分けることが先決でしょう。

自動化する優先度の判断

自動化を実装するにもコストがかかりますし、自動化に対する抵抗やリスクも存在します。「手軽なところから」などと始めてしまうと、自動化することはできたが思ったより効果が得られなかった、ということも起こり得ます。現在作業にかかっている工数や、利用頻度、自動化することによるメリット、実装の難易度、自動化後のリスクなどをスコアリングしてみると良いでしょう。企業の状況に応じて重視する観点なども異なるため、分類や考慮する事項や判断における重み付けなど検討が必要です。

Infrastructure as Code(IaC)の導入

Infrastructure as Code(IaC)とは、サーバーやネットワークの構成、設定などをソフトウェア開発的な発想でコードとして厳密に管理し、自動化する手法です。手作業で行っていた既存業務をツールで自動化するアプローチと異なり、IaCを実現するには開発・運用のプロセスを大きく変革する必要があるため、既存のインフラを抱えている場合いきなりIaCに切り替えるハードルは高いと言えます。とはいえ、ソフトウェア開発の視点から見た際の「インフラ自動化」には欠かせないアプローチです。

インフラ自動化における注意点

インフラ自動化を導入するうえで、注意すべきポイントについて解説します。

導入にかかるさまざまなコスト

インフラ自動化を実現するためには多くの準備・学習時間が必要となります。自動化する内容をツールに応じたコードで定義する必要もあるため、プログラミングに苦手意識のあるインフラ領域のエンジニアは心理的な障壁を感じることもあるかもしれません。これらの作業については、専門業者によるコンサルティングやサポートを受けるといった手段を検討することもおすすめです。

汎用性の有無

せっかく自動化を実現しても、業務に活かせなければ効果を感じられません。たとえばサーバー構成をコード化し自動化できる状態にしても、同様の環境を構築する機会がなければ労力がムダになってしまいます。自動化に取り組む前に、まずは現在の業務の洗い出しや整理を優先すべきです。

まとめ

IT人材の不足は深刻化しており、システムの効率的で安定した運用、人材の有効活用のためにはインフラ自動化は有効な手段です。ぜひインフラ自動化を推進するために業務の整理・標準化、ツールの導入、専門業者によるサポートなどを検討してみてください。

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