
Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドサービスでは、外部ネットワークとの通信にトラフィック課金が発生します。これは通信トラフィック量に応じて課金されるもので、この料金の仕組みについて理解できていないと、想定以上にコストが膨らんでしまう事態にもなりかねません。
本記事では、3大クラウドサービスの通信料金体系やトラフィック課金を節約する方法について詳しく解説します。
目次
1.クラウドサービスの通信料金・トラフィック課金とは
Amazon Web Services(以下AWS)、Microsoft Azure(以下Azure)、Google Cloudなどのパブリッククラウドサービスの料金体系は、サービスを利用した分だけ料金が発生する従量課金制です。加えて、これとは別にトラフィック量に対して課金される通信料金も発生します。トラフィックとはネットワークを流れる情報およびその情報量を指します。
この通信料金について把握していないと、使い方やネットワーク構成によっては想定以上にコストが膨らむ可能性があるので注意しましょう。
インバウンド・アウトバウンドの料金
トラフィックはインバウンドとアウトバウンドに区別されます。
インバウンドとは、パブリッククラウド内に入ってくる通信のことです。たとえばインターネットや他の企業ネットワークなど、外部のネットワークから社内ネットワーク内の仮想マシンなどにデータが転送される場合などが該当します。
アウトバウンドとは、反対にパブリッククラウド内から外部へ出ていく通信のことを指します。たとえば社内ネットワークから外部のWebサーバにアクセスする場合などが該当します。
AWS、Azure、Google Cloudはすべてインバウンド通信の料金は無料、アウトバウンド通信の料金は有料です。
2.AWSの通信料金体系
AWSでの通信料金体系は以下のとおりです。(東京リージョン・2025年4月時点)
アウトバウンド通信
AWSからインターネットへのトラフィックが発生した場合の料金は以下のとおりです。
最初の 10 TB/月 | 0.114USD/GB |
次の 40 TB/月 | 0.089USD/GB |
次の 100 TB/月 | 0.086USD/GB |
150 TB/月以上 | 0.084USD/GB |
アカウント内の通信
同一アカウント内での通信で発生する料金は以下のとおりです。
同一リージョン内への送信 | 無料 |
別リージョンへの送信 | 0.09USD/GB |
同一リージョン・別アベイラビリティーゾーンへの通信 | 送信は0.01 USD/GB、受信は無料 |
通信料金の計算方法
AWSでは料金見積もりツールが提供されています。使用するリージョンやサービス、想定されるデータ転送量などを入力すると、通信料金を含めた1か月あたりの想定料金が算出されます。
3.Azureの通信料金体系
Azureでの通信料金体系は以下のとおりです。(日本での使用・2025年5月時点)
アウトバウンド通信
Azureからインターネットへのトラフィックが発生した場合の料金は以下のとおりです。
インターネット エグレス (Microsoft Premium グローバル ネットワーク経由でルーティング)の場合
最初の 100 GB / 月 | 無料 |
次の 10 TB/月 | 0.12USD/GB |
次の 40 TB/月 | 0.085USD/GB |
次の 100 TB/月 | 0.082USD/GB |
次の 350 TB/月 | 0.08USD/GB |
インターネット エグレス (ルーティングの優先設定トランジット ISP ネットワーク経由でルーティング)の場合
最初の 100 GB / 月 | 無料 |
次の 10 TB/月 | 0.11USD/GB |
次の 40 TB/月 | 0.075USD/GB |
次の 100 TB/月 | 0.07USD/GB |
次の 350 TB/月 | 0.06USD/GB |
アカウント内の通信
同一アカウント内での通信で発生する料金は以下のとおりです。なお、AzureはAWSと異なり、同一リージョン・別アベイラビリティーゾーンへの通信は課金対象になりません。
同一リージョン内への送信 | 0.01USD/GB |
別リージョンへの送信 | 0.08USD/GB |
通信料金の計算方法
Azureでは料金計算ツールが提供されています。試算したいサービスのパネルを選択し、送信データ転送量などの必要な項目を入力すると、通信料金を含めた1か月あたりの想定料金が算出されます。
4.Google Cloudの通信料金体系
Google Cloudでの通信料金体系は以下のとおりです。(東京リージョン・2025年5月時点)
アウトバウンド通信
Google Cloudからインターネットへのトラフィックが発生した場合の料金は以下のとおりです。
0〜1 TiB | 地域により0.12〜0.23USD/GiB |
1〜10 TiB | 地域により0.11〜0.22USD/GiB |
10 TiB〜 | 地域により0.085〜0.20USD/GiB |
アカウント内の通信
同一アカウント内での通信で発生する料金は以下のとおりです。
別リージョンへの送信 | 地域により0.08〜0.14USD/GiB |
同一リージョン・別ゾーンへの送信 | 0.01USD/GiB |
通信料金の計算方法
Google Cloudでは料金計算ツールが提供されています。送信データ転送量などの必要な項目を入力すると、1か月あたりの想定料金が算出されます。
5.トラフィック課金を節約するには
トラフィック課金は知らないうちに膨らんでいく可能性があります。少しでもコストを抑えるために、トラフィック課金を節約する方法について紹介します。
アウトバウンドのデータ転送の最適化
トラフィック課金が発生するアウトバウンド通信をなるべく減らすため、環境を最適化することが重要です。たとえば次のようなことを考慮して設計すると良いでしょう。
- 通信料金の低いリージョンを選択する
- データをできるだけ同じリージョン・ゾーンに保存する
- パブリックIPアドレスの使用を制限する(プライベートIPアドレスよりもデータ転送コストが高いため)
CDNサービスを利用する
CDN(Content Delivery Network)とは、大容量のコンテンツをインターネット上で大量配信するためのネットワークのことです。 たとえばWebサイトを運営している場合、CDNサービスを利用することでコンテンツをCDNにキャッシュできるため、データ転送コストを削減できます。 CDNサービスは各社で提供されており、AWSではAmazon CloudFront、AzureではAzure Content Delivery Network、Google CloudではCloud CDNが該当します。
リンク ベアメタルクラウドを利用する
リンク ベアメタルクラウドは高性能な専用物理サーバをクラウド化してオンデマンドで提供するサービスで、他のクラウドサービスと比較してコスト面のメリットが大きいことが特徴です。物理サーバは1日単位、パブリックVMは1時間単位で利用でき、月間平均100Mbps(月間通信量約30TBほど)までのトラフィックは無料で利用できます。よほど通信量の多いシステムでなければ30TBを超えることはないため、トラフィック課金を節約するために有効な一つの選択肢となるでしょう。
6.まとめ
AWS、Azure、Google Cloudなどのパブリッククラウドサービスでは、外部ネットワークとの通信にトラフィック課金が発生します。通信料について把握していないと、思わぬコスト増になる可能性があるため注意しましょう。各クラウドサービスでは料金計算ツールが提供されているため、事前に通信料を含めたコストを試算するのがおすすめです。また今回紹介したトラフィック課金を節約する方法についても検討してみてください。
リンク ベアメタルクラウドは月間通信量約30TBまでの通信料が無料で利用できるサーバサービスです。他サービスと比較しても非常にコストメリットが大きいため、ぜひリンク ベアメタルクラウドも含めクラウドサービスを比較検討されてみてはいかがでしょうか。