改めて考えるクラウドサービス選びの「要件定義」

2019.01.30

むやみやたらなクラウド利用が招くインフラの複雑化

もはやクラウドは流行ではなく、新たなインフラの形として完全に定着したと言えるでしょう。利用する企業も、IT投資に積極的な企業やサーバ台数が多くクラウド化のメリットが大きい大企業のみならず、中堅・中小企業にまで広まっています。

ただ、実際にクラウドを利用する上で注意したいのはインフラの複雑化の問題です。現在はさまざまなクラウドサービスがあり、それぞれにメリットとデメリットが存在するため、用途に応じてクラウドサービスを使い分けたいと考えても不思議ではありません。しかし、利用するクラウドサービスが増えればそれだけインフラは複雑化します。

それによって運用が煩雑になることも十分に考えられるほか、守るべきポイントが増えることになるためセキュリティ対策も難しくなるでしょう。IT担当者が把握していないところでクラウドサービスが利用されているなど、ガバナンスの低下も大きな問題です。

もちろん、無理に1つのクラウドサービスに集約するのは得策ではありませんが、運用負荷の削減やコストの適正化、あるいはITガバナンスの確保を視野に入れるのであれば、できる限り利用するサービスを絞っておくべきです。

非機能要件を明確化すれば使うべきクラウドが見えてくる

では、クラウドサービスはどのように選ぶべきでしょうか。それを考える際、重要になるのが自社の要件の明確化です。特にシステム基盤としてクラウドを使う場合、非機能要件と呼ばれる項目を検討していきます。たとえばIPA(情報処理推進機構)では、「非機能要求グレード」(https://www.ipa.go.jp/sec/softwareengineering/reports/20100416.html)において以下の項目を非機能要件として挙げています。

実際にクラウドサービスを選定する際、まず意識されるのは可用性や性能・拡張性でしょう。可用性であれば許容できるシステム停止時間を定め、それに対してSLAなどとして提示されているクラウドサービスの稼働率が自社の要求を満たしているかを判断します。

ただ、この稼働率以上に意識したいのはサポート体制です。何らかの問題が発生した際の問い合わせ窓口は明確化されているか、その際にどのようなサポートが受けられるのかは明確にしておきたいポイントです。

非機能要件項目 概要
可用性 求められるシステムの稼働時間やシステム障害時の復旧目標時間、災害対策など
性能・拡張性 サーバーに求められる処理能力やレスポンスなど。また将来の処理量増大の見込みや、それに対応するために必要となるリソースなどについても検討する
運用・保守性 システム監視およびシステム停止時の対応などについて。バックアップについてもここで検討を行う
移行性 既存インフラから移行するシステムの内容や種類、移行量など。これを元に移行計画や移行スケジュールを策定する
セキュリティ性 実施すべきセキュリティ対策の内容や保護対象となるデータなどを明確化する
システム環境 クラウドサービスが運用される環境の耐震性や環境対応などを定義する

 

クラウドサービス選びのポイント

性能や拡張性を重視する場合

性能や拡張性も重要です。特にクラウドサービスの場合、記載されているスペックどおりのパフォーマンスが得られないケースもあります。その理由の1つとして挙げられるのがサーバ仮想化のオーバーヘッドで、必要なパフォーマンスが得られない場合はさらに高スペックな仮想サーバを利用することになり、コスト上昇につながります。一方、物理サーバをクラウドサービスとして提供するリンクのベアメタルクラウドのようなサービスであれば、ハードウェアの性能をフルに利用することが可能です。こうしたサービスの違いも視野にサービスを選びましょう。

セキュリティを重視する場合

もう1つ、クラウドサービス選びでポイントとなるのはセキュリティです。オンプレミスと異なり、クラウドサービスの場合は自由にセキュリティ機器を設置するといったことができません。そのため、Webアプリケーションを保護するWAFの提供など、どういったセキュリティ機能が利用できるかを事前に確認しておきます。

 

非機能要件整理することで最適なインフラ選定を実現

これからクラウドサービスを利用するといった場合、こうした非機能要件を改めて整理して、自社にとって最適なクラウドサービスは何かを考えていくとよいでしょう。なおすでに利用しているクラウドサービスを見直すといった場面でも、事前に非機能要件をまとめておけば、客観的にクラウドサービスを評価できるのではないでしょうか。

 

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