サーバーバックアップの種類を解説! 目的に応じた最適な方法とは?

2021.01.27

コロナ禍によるオンライン活動の活発化から、これまで以上に情報の資産価値は高まっていくと考えられます。そこで注目すべきが「バックアップ」です。特に情報資産の大半が集まる「サーバー」に対するバックアップは、BCPや競争力の維持、信用力の向上などにつながります。ただし、サーバーバックアップにはさまざまなソリューションがあるため、目的・用途に応じて適切な方法を選択したいところです。ここでは、サーバーバックアップの目的や種類、方法などについて解説します。

サーバーバックアップの目的とは?

まず、サーバーバックアップの目的と効能について解説します。

サーバーバックアップの目的

サーバーバックアップは、一般的には2つの目的で行われます。ひとつは「事業に対する保険(DR、BCP含む)」として、もうひとつは「証跡・証拠の保持」です。

保険

企業活動の中で絶え間なく発生し続ける在庫データや顧客データ、会計データは企業活動を続ける上で非常に大切なデータです。バックアップは、このようなデータをミスや障害、災害などで消失してしまうことを防ぐための「保険」として行います。

証跡・証拠の保持

高度情報化社会である現代において、企業のセキュリティインシデントや内部不正が企業に与えるダメージは、以前とは比較にならないほど大きくなっています。たった一度の改ざんや情報漏洩が、事業の継続を危うくしたり、企業価値を暴落させたりする事態に発展しかねません。企業はこうしたリスクに立ち向かうため、迅速かつ適切な原因究明の方法を保持しておかなくてはなりません。そのひとつが、サーバーバックアップなのです。

サーバーバックアップの効能

サーバーバックアップの効能は、下記3つに集約されます。

  • 有事のダウンタイムを最小限にとどめる
  • 災害復旧、事業継続性の強化
  • コンプライアンス強化による信用力の向上

いずれも高度情報化社会を生き抜く企業には必要不可欠であり、業種・業界・分野を問わず必須のソリューションだと言えます。

バックアップの種類、方法

次に、バックアップの種類と方法を整理していきましょう。バックアップの種類としては、大きく「システムバックアップ」「データバックアップ」の2つがあります。また、データバックアップは、バックアップ対象データによって3つの方法に分類できます。

システムバックアップ(イメージバックアップ)

システムバックアップは、「OSそのもの」を含んだシステム全体をイメージファイルとして保存し、バックアップを取得します。システムバックアップの中には、ネットワーク・ストレージ設定・データベースソフトウェア・各種修正パッチなど、システム稼働に必要な情報が丸ごと含まれています。極論を言えば、ハードウェア以外の全てがシステムバックアップに含まれるため、バックアップデータさえ無事ならばいつでも「バックアップ時点」まで、システムを復元できるわけです。

データバックアップ

データバックアップでは、ファイル・フォルダ内に存在していた業務データや資料など、一般的に「データ」と呼ばれる情報のみをバックアップ対象とします。データバックアップはデータを必要な単位で保護できるため、「特定のデータだけ復元したい」などの要望には迅速に対応ができるところがメリットです。しかしデータだけバックアップしていても、サーバーに障害が発生した場合、もしシステムバックアップを取っていなければ一から構築し直す必要があるため、復旧に時間がかかる点がデメリットとなります。また、データは日々増え続けるものであり、全データを毎回バックアップ対象としていては、データ量が膨れあがり保管コストが嵩んでしまいます。そこで、状況に応じて次のような方法を選択するのが一般的です。

バックアップ取得方法の種類

フルバックアップ

丸ごと「全て」バックアップを取得する方法です。バックアップ方法の中では時間・コストともに最大です。全てのデータを取得するので、そのまま復元するだけでバックアップ取得時点と同じ状態になるのでわかりやすくシンプルですが、こまめにフルバックアップを取っていれば当然データ容量は膨大となります。したがって、週1回や月1回など、頻度を抑えた運用が一般的です。

増分バックアップ

増分バックアップは、「前回バックアップ時」から「増えた分」のみを保存する方法です。フルバックアップを起点とせず、単純に前回からの増加分のみを対象とするため、保存データ量が肥大しにくい点が特徴です。また、バックアップに要する時間も短いため、日次バックアップでよく用いられます。ただし復元時には、前回のフルバックアップ時から全ての増分バックアップを重ねてリストアしていく必要があるため手間がかかります。

差分バックアップ

差分バックアップは「前回フルバックアップ時」から「増えた分」を保存する方法です。フルバックアップ以降に増えた分を全て対象とするため、どうしてもバックアップに重複が発生し、フルバックアップ取得時点から日を追うごとにバックアップデータが大きくなる傾向にあります。ですが、復元にはフルバックアップと直近の差分バックアップだけでリストアができるので、増分バックアップに比べればリストア時の手間は軽くなります。

バックアップで用いられる記憶媒体

バックアップ用の記憶媒体としては、次の3つのうちいずれか(もしくは複数)を用いることが一般的です。

HDD

サーバー筐体内のディスクや、外部のネットワークディスク(NAS)は、入手性・容量・データアクセス速度・コストのバランスが優れているため、手軽で有力な選択肢となるでしょう。ただし、サーバーと同一ネットワーク内にある場合は、ウィルス感染や不正侵入時にデータを消失するリスクがあります。また、その対策がなされていたとしても同一拠点の場合は、マシン室の停電や拠点自体の災害(火災・水害・地震など)のリスクには対応できないという限界があります。

磁気テープ

レガシーソリューションでありながら、ここ数年で再評価され、新しいソリューションとしてリファインされました。一部の磁気テープメディアはHDDと同等のアクセス速度を誇っており、調達コスト・保管時の格納スペース・可搬性の高さといった点でHDDよりも優れています。一方、火災・水害・地震などによる破損リスクが大きいことや、平均的なリード・ライト速度の遅さなどが弱点と言えます。また、保管場所や作業時間を考慮すると、中長期的には負担が大きいかもしれません。

クラウドストレージ

物理的な破損リスクやデータ損傷のリスクがほぼ存在せず、遠隔地バックアップを用いれば「輸送」も不要であるという点で、優れた記憶媒体です。弱点としては、オフライン環境下でのバックアップ・リストアが不可能な点と、バックアップデータがあまりに膨大な場合データの転送に時間がかかる点が挙げられるでしょう。裏を返せば、オンライン状態さえ保持でき、一度に取得するバックアップのデータ容量が大きすぎなければ、クラウドストレージを用いた遠隔地バックアップは非常に強力なBCP・DR対策になり得ます。

システム・データの遠隔バックアップならクラウド活用が吉

近年は、Web系のシステムを中心にクラウドを前提としたバックアップソリューションが増えています。オンプレミスの場合はバックアップ専用システム構築が必須である一方、クラウドではこうした手間・コストは不要です。磁気テープの再評価といった流れはあるものの、今後はやはりクラウド利用を前提としたバックアップが主流になっていくでしょう。特に以下のようなクラウドバックアップソリューションは、可用性・コスト・使い勝手の面から非常におすすめです。

クラウドバックアップソリューションの選定ポイント

  • システムバックアップ、データバックアップ両対応
  • 遠隔地バックアップ(記録媒体の輸送・移動が不要)
  • 複数リージョンによる分散保存が可能

リンク ベアメタルクラウドでも、従来から提供していたイメージバックアップに加え、データバックアップに対応した「DRバックアップ」サービスの提供を開始しました。「DRバックアップ」では、ベアメタルクラウドから別拠点のクラウドストレージへデータを退避することが可能なため、データ消失のリスクはさらに小さくなります。システムイメージとデータ双方を「遠隔地バックアップで分散しながら」保存することにより、有事のリスクを低減し、更なるシステムの保全性向上を実現します。 

まとめ

本稿では、サーバーバックアップの種類や方法、記憶媒体の種類などについて解説してきました。バックアップは、用途や目的によって最適なソリューションは異なりますが、災害・サイバー攻撃・人為的なミスなどへの対応とともに、コストや可用性も考慮した選定を心がけたいところです。特にクラウドを活用したバックアップは、利便性が高く低コストであるため、積極的に活用を検討すべきでしょう。