通信トラフィック増加の影響と対策は? パブリッククラウドの通信料についても解説

2023.02.07

IT・通信分野における「トラフィック」とは、PCやサーバーなどのITリソースをつなぐ通信回線で一定時間内に転送されるデータ量のことです。近年特にクラウドサービスの利用拡大やリモートワークの普及により、多くの企業でトラフィックは増加傾向にあります。本記事ではトラフィックの概要、トラフィック増大による影響や対策、パブリッククラウドにおけるトラフィック料金などについて解説します。

トラフィックとは

トラフィックとは、本来「交通」「通行」「往来」などの意味を持つ英単語です。IT・通信分野で使われる場合は、クライアントPCやサーバーなどをつなぐネットワークにおいて一定時間内に送受信されるデータ量を指します。

TCP/IPネットワークで通信を行う際、データはパケットと呼ばれるまとまりに分割され送信されます。「トラフィックの増加」という表現は、車の量が増えると道路が混雑するように、パケットの量が増えて通信回線の利用率が増えている状態を指します。

ネットワーク帯域・通信速度との関係

トラフィックと同様にネットワークにおいてよく使われる用語の「ネットワーク帯域」や「通信速度」との関係について解説します。

ネットワークにおける帯域とは、通信に使用される「最高周波数」と「最低周波数」の範囲のことで、ネットワーク帯域幅は一定の時間内に送信できるデータ量の上限を指します。ネットワーク帯域の単位は「bps(bit per second)」が使われ、1秒間に何ビットのデータを送受信できるかを表します。

道路の幅が広いほど一度に通れる車の量も増えるように、帯域幅が広いほど一度に多くのパケットを送信できます。短い時間で多くの通信ができるため、ネットワーク帯域が広い=通信速度が速いということになるのです。ネットワーク帯域が十分に広ければ、トラフィックが増えても通信速度は落ちないということになります。

ネットワーク帯域と通信速度について詳しくはこちらの記事で解説しています。
ネットワーク帯域とは? 通信速度との関係と改善方法について解説 | ベアメタルブログ

トラフィック増加による影響と対策

働き方改革やコロナ禍によりリモートワークが普及し、オフィス以外でも業務ができるよう業務システムのクラウド化やリモートアクセスの導入、Web会議の活用が進んでいます。SaaSアプリケーションの利用やWeb会議のビデオ通話の増加により、トラフィックもより一層増加傾向にあります。

ネットワークの輻輳とは

今まで問題なく利用していたネットワークでも、急にトラフィックが増加した場合、輻輳(ふくそう)が発生する場合があります。輻輳とは「多くのものが1ヶ所に集中して混雑している状態」のことで、ネットワークにおける輻輳とは送受信するパケットの量が増えて回線が混雑し、渋滞している状態です。

通信の交通整理を行うスイッチやルータといったネットワーク機器には、回線容量以上のパケットを収容するバッファが備わっています。多少の通信容量オーバーはバッファによって吸収されますが、通信が集中してバッファに収まらなくなった場合、溢れたパケットは廃棄されてしまいます。パケットが宛先に届かず消失してしまうことを「パケットロス」といいます。多少パケットロスが発生しても、通信に使用されるTCP/IPのプロトコルには届かなかったパケットを再送する仕組みが備わっているので、通常は問題ありません。しかし輻輳が発生しパケットロスが増大すると、通信が遅延し、さらに悪化するとネットワークがつながらなくなってしまうこともあります。

輻輳を回避するための対策

輻輳を回避するには、以下のような対策方法があります。

ネットワークの利用状況を把握する

まずはネットワークのどこにボトルネックが発生する可能性があるか、状況を把握するための調査が必要です。実際にネットワークの遅延や切断が起きている場合は、原因が何なのか切り分けなければなりません。たまたま当該のクラウドサービス事態に障害が起きているのか、Windowsのアップデートがある日など特定の条件で発生するのか、特定のネットワークセグメントで起きているのか、慢性的にネットワークが遅いことが多いのか…など、さまざまな状況が考えられます。遅延原因を切り分けるために、社内でどの程度のトラフィックが発生しているのか、可能であればトラフィックを監視すると良いでしょう。

ネットワーク構成/機器を見直す

自社のネットワーク構成を見直し、不十分な場合は強化しましょう。例えば、一部の古いシステムやネットワークが狭い帯域幅を使用している場合や、ネットワーク機器の処理能力が足りずボトルネックになっている可能性もあります。そういった場合は、ローカルネットワークの帯域幅を上げたり、ネットワーク機器を処理能力の高いものへ入れ替えたりすることで改善すると考えられます。

インターネット回線を見直す

調査した結果、契約しているインターネットの回線に問題があると考えられる場合は、契約プランやプロバイダの変更を検討すべきでしょう。「下り最大10Gbpsの高速通信!」などと謳っていても、基本的にベストエフォートと呼ばれる方式のため、利用者が多く混雑している場合などは通信速度が低下します。新たな回線を選ぶ際には、最大通信速度だけでなく帯域保証はあるのか、実際の口コミはどうかなど安定性に注目することも大切です。

また、インターネットの接続方式としてPPPoE方式を採用している場合、IPoE方式に切り替えるのがおすすめです。IPoE方式とはIP over Ethernetの略で、LANなどコンピュータ同士を接続するイーサネットの方式でインターネットに接続するものです。IPoEは接続のための中継設備が必要となりますが、PPPoEよりも帯域幅が広く混雑が緩和されるため輻輳が起きにくい特徴があります。

パブリッククラウドにおけるトラフィック

社内システムや自社サービスをAWSやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドサービス上に構築している場合は、パブリッククラウドにおけるトラフィックも考慮する必要があります。

パブリッククラウドのトラフィック課金(通信料)

パブリッククラウドサービスは、利用した分だけ料金を払う従量課金方式がメリットの一つですが、注意しなくてはならないのはトラフィック(通信量)に対してもコストが発生するという点です。パブリッククラウドの通信に関してどのように料金が発生するのかはサービスによりますが、大体以下のように分類できるでしょう。

インバウンド通信

パブリッククラウドに入っていく通信。インターネットや企業ネットワークなど、外部ネットワークからパブリッククラウドに対する通信。AWSやAzureなど、インバウンドの通信については無料である場合が多いです。

アウトバウンド通信

パブリッククラウドから出ていく通信。インターネットや企業ネットワークなど、外部ネットワークに対する通信。AWSやAzureなど、利用しているリージョン(地域)や月間のトラフィック量に応じて単価が変動するようになっています。

パブリッククラウド内の通信

パブリッククラウド内での通信は、同一ネットワーク内であれば無料であることが多いです。リージョンやアベイラリティゾーン、プライベートネットワークなど、パブリッククラウド内でのネットワークセグメントを跨ぐかどうかによって課金の有無や料金が変わります。

ネットワーク関連サービスの利用料

その他ネットワークに関連するサービスを利用する場合、そのコストも発生します。例えばIPアドレスや、ロードバランサー、ゲートウェイ、VPNなど、各サービスの利用料に加え、各サービスを通過するトラフィック量やデータ処理量に対しても課金される場合があります。

参考:
ServerWorks「AWSの通信で料金がかかる箇所をまとめてみた」https://blog.serverworks.co.jp/2020/08/05/193707
Azure「帯域幅の価格」https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/bandwidth/

具体的には、パブリッククラウド上のストレージにデータをアップロードする場合は、インバウンドの通信となるため(VPNなど各種ネットワーク関連サービスを考慮しなければ)トラフィックは無償となります。しかし、例えばパブリッククラウド上に構築したシステムのログを外部のサービスに転送したりローカルにダウンロードしたりする場合は、アウトバウンドの通信となるためトラフィック料金がかかります。

通信料は事前に正確に見積もることが難しく、想定外のコストが発生してしまう可能性もあるため注意が必要です。

リンクベアメタルクラウドのネットワーク

リンクベアメタルクラウドは、高性能な専用物理サーバーをオンデマンドで利用できるクラウドサービスです。アカウントごとに専用のUTMとプライベートネットワークが標準で提供され、月間平均100Mbps分までのトラフィックが無償です。

バックボーンの回線は10Gbpsのため、一時的に100Mbpsを超えるようなバーストトラフィックが発生しても問題ありません。月間平均100Mbpsは、トラフィック量に換算すると約31TB程になるため、よほど通信量の多いサービスでない限り超えるようなことはないでしょう。仮にAWSで月平均100Mbpsアウトバウンド通信が発生する場合、単純計算で約2900ドル=40万円程度になるため、リンクベアメタルクラウドのコストメリットは非常に大きいと言えます。

まとめ

IT・通信分野において使用されるトラフィックとは、通信回線で一定時間内に送受信されるデータ量のことを指します。トラフィックは増加傾向にあり、業務に影響が出ないよう十分なネットワーク帯域を用意するなどの対策が必要です。

またトラフィックに従量課金が発生するパブリッククラウド上にシステムを構築している場合、トラフィックの増加によって思わぬコスト増につながる恐れもあります。各社の料金システムについても理解し、自社に最適なサービスを選択しましょう。

この記事を読んだ人へオススメ

ナレッジ

ネットワーク帯域とは? 通信速度との関係と改善方法について解説

リモートワークの普及に伴いWeb会議を行う場面も増え、企業ではこうした変化に対応するための...

2022.07.13

ナレッジ

レイテンシとは? ネットワーク性能指標の概要と改善方法を解説

自社で提供しているWebサイトやWebサービスが遅い・重いというお悩みはないでしょうか。サ...

2022.02.02

ナレッジ

サーバーダウンの原因と防止のための対策とは?

Webサイト運営において、注力すべき事柄のひとつに「サーバーダウン対策」があります。頻繁に...

2021.07.14

ナレッジ

【サーバー負荷軽減対策!】CDNとは? その仕組みとメリット・デメリット

近年、Webサイト・サービス運営において「ユーザ体験(UX)」の向上が叫ばれています。UX...

2021.08.17