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クラウドベンダーが積極的にPaaSを充実させる理由
ガートナーが提唱する概念の1つに「バイモーダルIT」があります。これは会計や生産管理、在庫管理など、ビジネスの記録や業務コストの削減を目的としたシステムを「モード1」、顧客とつながることを主な目的として、“攻めのIT”を実現するシステムを「モード2」として区別し、それぞれの最適な手法でシステムを開発、運用するという考え方です。
このモード1とモード2では、システムの開発手法も異なります。安定性や信頼性が強く求められるモード1では、決められた要件を元に設計を行って開発へと進むウォーターフォールが最適だとされています。一方、要件が曖昧であることが多く、まずチャレンジして状況を見ながら対応することが求められるモード2では、スピードや環境の変化に柔軟に対応できるアジャイル開発で進められることが一般的です。
モード1 | モード2 | |
システムの種類 | 会計システムや生産管理システム、在庫管理システム人事システムなど | 顧客との関係を構築、あるいは強化することを目的としたシステム、あるいはサービスを提供するためのプラットフォームなど |
システム開発で重視されるポイント | 安定性、信頼性 | 俊敏性、柔軟性 |
開発手法 | 主にウォーターフォール開発 | 主にアジャイル開発 |
利用するクラウドサービス | IaaSが中心。昨今ではパッケージ製品をクラウド化したSaaSも普及しつつある | PaaSが中心。またAIやIoTといった個別のテクノロジーを提供するクラウドサービスも利用される |
バイモーダルITから見たクラウドサービスの選択肢
適材適所でサービスを選択するマルチクラウドは実際、Amazon Web Servicesやマイクロソフト、Googleでは、モード2のいわゆる「クラウドネイティブアプリ」の開発に適したPaaSを積極的に展開しているほか、AIに代表される先進的な機能をクラウドサービスとして提供する取り組みを積極的に進めています。
デジタルビジネスやデジタルトランスフォーメーションの実現を目指すモード2の領域では、こうしたサービスを利用することを前提にシステムを開発することが主流となりつつあります。開発するシステムの内容や開発手法の違いは、インフラの選定にも大きく影響します。
特にスピードが重要な要素となるモード2の場合、サーバを確保した上でOSやミドルウェアをインストールして、その上で開発を行うといった手間はできるだけ省きたいところです。そこで主流となっているのがPaaSの活用です。あらかじめアプリケーションの開発・実行環境が整えられているため、即座に開発を初めて最短距離でサービスインを目指すことができることが利点です。
モード1のシステムにIaaSが最適である理由
では、モード1の世界はどうでしょうか。確かに多くの企業が業務アプリケーションのクラウド化を積極的に推し進めていますが、モード2のようにPaaSを利用して開発するのではなく、IaaSとして提供されている仮想サーバを利用し、従来と同様にシステムを構築する、あるいは既存のシステムのインフラをクラウドに置き換えるといった形が一般的です。
その理由の1つとして挙げられるのがパッケージソフトウェアの存在です。会計や在庫管理、人事といったアプリケーションそのもの、あるいはデータベースやデータ連携といった機能を提供するミドルウェアなど、業務システムではさまざまなパッケージソフトウェアが使われています。これらは基本的にサーバ上にOSをインストールして利用する、旧来型のインフラでの利用を前提としているため、クラウドサービスの選択肢も必然的にIaaSに絞られるというわけです。
マルチクラウドで実現するバイモーダルIT
このように異なるモード1とモード2のそれぞれのインフラを考える際、両者を1つのクラウドサービスで完結させるのではなく、適材適所で適切なサービスを使い分ける方が合理的でしょう。そこで意識したいのが「マルチクラウド」環境の実現です。
マルチクラウドのメリットは、開発するシステムの要件や予算に合わせてクラウドサービスを選定できる点です。確かにAmazon Web ServicesやGoogle、マイクロソフトは、PaaSだけでなくIaaSもラインナップしていますが、たとえばコスト最適化の観点から考えたとき、モード1とモード2の両方で同じサービスを利用することがベストだとは限らないでしょう。そこでモード1とモード2を切り離して考え、それぞれでベストな選択を行うというバイモーダルITの考え方を踏襲するわけです。
モード1のシステムに最適なリンクのベアメタルクラウド
この際、モード1のシステムを稼働させるためのインフラとして積極的に選択したいのが、物理サーバをクラウドサービスとして提供するベアメタルクラウドです。
物理サーバと仮想サーバをオンデマンドに使い分けることができる
リンクのベアメタルクラウドであれば、物理サーバをそのまま使うことも、その上で仮想サーバを実行することも可能であり、用途に応じて適切なリソース配分を実現できます。このため、それほどリソースを消費しないアプリケーションは仮想サーバ、データベースなど高性能なインフラが求められる領域では物理サーバを直接利用するなど、適切に使い分けることが可能です。また物理サーバであれば仮想化のオーバーヘッドを避けられるため、高いパフォーマンスが得られることもポイントでしょう。
24/365のエンジニアによるサポート
手厚いサポートが受けられることもリンクのベアメタルクラウドのメリットです。信頼性が重視されるモード1のシステムにおいて、何かあったときに気軽に問い合わせできる環境が整えられていることの意味は大きいのではないでしょうか。
なおマルチクラウドのメリットを最大化するためには、むやみやたらと利用するクラウドサービスを増やさないことがポイントです。利用するクラウドサービスが増えればそれだけインフラが複雑化し、運用負荷の増大やセキュリティリスクの向上につながりかねないためです。そのため、あらかじめインフラの全体像を検討しつつ、IT部門などがガバナンスを効かせられるようにクラウドの利用指針を定めるといった取り組みが必要でしょう。
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