ITにおけるコンテナとは? 仕組みやメリットをわかりやすく解説

2024.02.06

コンテナとは、Webアプリケーションなどの開発・管理を効率的に行えるようにするための仮想化技術の一つです。その利便性の高さから近年注目を集め、開発現場にコンテナを導入する企業が増えています。 本記事では、コンテナの概要から従来の仮想マシンとの違い、メリット・デメリット、ユースケースまでわかりやすく解説します。

コンテナとは

コンテナとは、アプリケーションの実行に必要な環境を独立した一つのパッケージとする仮想化技術のことです。

英単語の「Container(容器)」が語源となっており、物流業界などで輸送に使用されるコンテナと同様に「持ち運びできる入れ物」のようなイメージです。オンプレミスやクラウドなど環境を問わず、アプリの実行環境を自由に持ち運びできます。

具体的には、コンテナエンジンを通してアプリの実行に必要なOSの基本環境(カーネル)を複数のコンテナで共有します。これにより不要なリソースを削減し、アプリケーションを稼働させるための環境を軽量なパッケージとして、実際の実行環境から分離して扱うことができるのです。

仮想マシンとの違い

仮想マシンはサーバー上で仮想化ソフトウェアを実行し、作成した仮想環境の中にそれぞれゲストOSから構築します。一方で、コンテナはOSの基本的な役割をコンテナエンジンが担うため、このゲストOSが不要という違いがあります。

コンテナはゲストOSの起動が不要な分、仮想マシンよりも軽量で動作が速いことが特長です。また複数のゲストOSがそれぞれサーバーリソースを使用することで生じる無駄を省き、効率的に利用できます。

一般的な仮想化とコンテナの違いを図式化したもの

コンテナのメリット

コンテナを利用することで得られる具体的なメリットは次のとおりです。

リソースを効率的に使える

前述したように、コンテナはゲストOSが不要なため、必要とするコンピューティングリソースが少なく、処理速度も速いです。そのためリソースを削減しコスト効率の向上が期待できます。

移行しやすい

コンテナはハードウェアやOSから独立しているため、異なる環境に移行しても同じように動作させることができます。環境構築と移行の手間を削減できるため、開発からデプロイも簡単になりリリースサイクルを速める効果もあります。

開発に集中できる

コンテナを使用してOSやハードウェアから開発環境を分離することで、開発者はアプリケーションロジックと言語やライブラリの依存関係の管理などに集中できます。

コンテナのデメリット

一方で、コンテナのデメリットとされる部分は次のとおりです。

ホストOSに依存する

仮想マシンの場合はマシンごとに異なるOSを使用して環境を構築できますが、コンテナはホストOSを共有するため、一つのサーバー上でWindowsとLinuxなど複数のOSを利用することはできません。

運用の複雑化

コンテナはアプリケーションごとに環境を細かく分割できるメリットがある一方、コンテナの数が増えることで管理・運用が複雑化しやすいデメリットもあります。しかし、これは後述するコンテナオーケストレーションツールで効率化することも可能です。

コンテナの代表的なサービス

コンテナを運用するためのサービスは複数存在しますが、その中でも代表的なDockerとKubernetesについて解説します。どちらもオープンソースで提供されており、デファクトスタンダートとなっているサービスです。

Docker(コンテナエンジン)

コンテナエンジンとはコンテナを制御・実行するソフトウェアのことを指します。DockerはDocker社によって開発された、もっとも有名で普及しているコンテナエンジンです。

Dockerは他のコンテナエンジンよりも動作が軽く使いやすいことが特徴で、環境構築や共有が簡単にでき分担作業にも適しているため、多くの開発現場で使用されています。

Kubernetes(コンテナオーケストレーションツール)

コンテナオーケストレーションツールとは、複数のコンテナを効率的に管理するためのツールを指します。Kubernetesは、Google社によって開発されたコンテナの運用管理や自動化に特化したコンテナオーケストレーションツールです。Dockerのようなコンテナエンジンと組み合わせて使用します。

コンテナはメリットが多いものの、数が増えると運用や管理が煩雑になりがちです。Kubernetesはこのデメリットを解消するために用いられ、複数のコンテナを統合的に管理し、スケールイン・アウトなども自動的に行うことができます。

コンテナのユースケース

コンテナにはメリット・デメリットがありますが、具体的にどのような場面で使用するのが適しているのでしょうか。ここでは、コンテナのユースケースについて紹介します。

マイクロサービスの構築

マイクロサービスとは、アプリケーションを複数の小さな独立したサービスに分割して開発・デプロイを行う、ソフトウェア開発におけるアーキテクチャです。柔軟性やスケーラビリティ、耐障害性がメリットとされています。

コンテナを利用してマイクロサービスを構築すると、独立したコンテナ内で実行される各マイクロサービスが異なる環境でも一貫した方法で実行されます。これにより環境の違いによる問題を最小限にすることが可能です。

スピーディなアプリケーションリリース

スピード感を持って新たなアイデアを市場に投入することは、ニーズの変化が激しい現代において先行者利益の面で企業にとって重要です。コンテナはあらゆる開発環境をスムーズに構築できるため、スピードが求められるアプリケーションの開発・リリースに適しています。

ハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境

コンテナは移植性が高く、オンプレミス・クラウドを問わずさまざまな環境で実行できるため、複数の環境を組み合わせるハイブリッドクラウド・マルチクラウド環境にも適しています。またオンプレミスからクラウドへ移行する場合にも、オンプレミスで稼働していたアプリをコンテナ化することでスムーズな移行に役立ちます。

まとめ

コンテナはアプリケーションの実行に必要な環境を独立した一つのパッケージとして構築する仮想化技術です。仮想マシンとは違い、ホストOSを複数のコンテナで共有するため起動が速く、リソースを無駄なく使えるといったメリットがあります。また移行しやすいことが特長で、オンプレミスやクラウドを問わずさまざまな環境で動作させることが可能です。

環境構築が容易でスピーディな開発を実現できることから、コンテナを導入する企業は年々増えています。開発業務の効率化を目指してコンテナの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

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