プライベートクラウドとは? 2つの利用形態とメリット・デメリットについて解説

2022.03.31

近年、クラウドを導入する企業が増加の一途を辿り、システムのインフラとして確固たる地位を築いています。クラウドはさらにパブリッククラウド・プライベートクラウドに分類できますが、企業の規模や求める要件によって使い分けることが重要です。本記事では、プライベートクラウドに焦点を当て、プライベートクラウドの概要とパブリッククラウドとの違い、プライベートクラウドの利用形態やメリット・デメリットについて解説します。

プライベートクラウドとは

プライベートクラウドとはどのようなものでしょうか。まずはプライベートクラウドの定義と、パブリッククラウドとの違いについて解説します。

プライベートクラウドの定義

プライベートクラウドは、特定の企業や組織が独自に構築し利用する専用のクラウドです。

企業など同一組織内での利用に特化したクラウドとなるため、業務形態や用途などに応じて、ネットワークやサーバーの設計、セキュリティ要件などに柔軟に対応できます。機微な情報を取り扱う場合や、他システムとの連携、ネットワーク遅延の少なさなどを重視する際に選択肢に上がる場合が多いでしょう。高いセキュリティを実現しながら、クラウドの柔軟性や拡張性を併せ持つものといえます。クラウドを利用する企業・組織自体または運営を委託された外部組織が運用・管理を行う形態が一般的です。

パブリッククラウドとの違い

パブリッククラウドとは、利用機会が一般公開されており、利用規約を承諾し登録すれば誰にでも利用できるクラウドです。

サーバーやネットワークなどのリソースをオンデマンドで利用可能です。代表的なサービスとしては、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformなどがあります。

パブリッククラウドがオープンであることに対し、プライベートクラウドは特定の企業や組織が独自に利用するクローズドなクラウドです。パブリッククラウドは仕様が公開されており、一般に個々の利用者の要望に応じたカスタマイズは行いません。それに対してプライベートクラウドは柔軟に個別のカスタマイズが可能な点が大きな違いです。

プライベートクラウドの利用形態

プライベートクラウドにも、大きく分類して下記2つの利用形態があります。ここではプライベートクラウドの2つの利用形態と特徴について解説します。

  • オンプレミス型プライベートクラウド
  • ホステッド型プライベートクラウド

オンプレミス型(所有型)プライベートクラウド

オンプレミス型プライベートクラウドは、企業が独自にハードウェアを調達して構築し、所有する形態のプライベートクラウドです。

データセンターやビルのマシンルーム等に設置し、社内ネットワークや専用線、VPNなどを介して接続・利用します。クラウドのためのインフラを調達し、設計と構築を行う必要があるため、潤沢な資金があり、システムに対する個別の要望が多い大企業や大きな自治体などに向いている構成といえます。

ホステッド型(利用型)プライベートクラウド

ホステッド型プライベートクラウドは、インフラをクラウド事業者から提供してもらい、サービスとして利用する形態のプライベートクラウドです。

クラウド事業者のデータセンター等に、専用線やVPNを介して接続・利用します。オンプレミス型に比べれば手間がかからず、安価かつ迅速に利用できます。

 

オンプレミス型・ホステッド型それぞれのメリット・デメリット

オンプレミス型・ホステッド型は、それぞれ利用する企業の規模や必要性に応じて選定すべきです。ここではオンプレミス型・ホステッド型それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

オンプレミス型プライベートクラウドのメリット

オンプレミス型プライベートクラウドのメリットは下記の通りです。

インフラのスペックや構成など自由にカスタマイズ可能

オンプレミス型プライベートクラウドは、利用者である企業が独自に調達・構築するため、コストの許す限り、初期導入段階からサーバーのスペックやストレージ容量、ネットワーク帯域などのリソース構成や、冗長構成、大規模災害対策など、自社の要件に合わせてインフラを自由に構成できます。

他システムとの連携や低遅延なネットワーク

既にオンプレミスでシステムを構築し利用している場合、同じ拠点にプライベートクラウドを構築することで連携面やネットワーク面でメリットがあります。自社のクローズドなネットワーク内で利用したい場合や、低遅延な通信を実現したい場合はオンプレミス型のプライベートクラウドが優位でしょう。

独自のセキュリティポリシーを反映可能

近年、サイバー攻撃などによるセキュリティインシデントが増加しており、企業のセキュリティ対策の重要度が高まっています。オンプレミス型であれば、完全にクローズドなネットワーク内で利用することも可能なため、企業のポリシーに合わせて柔軟かつ強固なセキュリティ対策を施せます。

オンプレミス型プライベートクラウドのデメリット

オンプレミス型プライベートクラウドのデメリットは下記の通りです。

初期導入時の調達・構築コストが高い

オンプレミス型プライベートクラウドは、サーバー・ネットワーク・ストレージなどを自前で調達し、設計・構築する必要があります。また、設置場所となるデータセンターやマシンルームなどのコストもかかります。初期導入時に大きなコストが必要となる点がデメリットといえます。

導入を決めてから利用開始までの時間がかかる

サーバーやネットワーク、ストレージなどの機器は調達から設置までに1ヵ月から数ヵ月のリードタイムが必要です。また、設計や構築、テストの期間も必要です。導入を決めてから利用できるまでに数ヵ月以上の時間が必要となります。

インフラの障害対応や運用の手間がかかる

初期導入だけでなく、その後の運用管理にも手間がかかります。ハードウェアの故障含むインフラの障害対応や、脆弱性対策としてアップデートやバージョンアップなどの運用作業が必要となります。

ホステッド型プライベートクラウドのメリット

ホステッド型プライベートクラウドのメリットは下記の通りです。

月額費用で利用でき初期導入コストを抑えられる

サービスにもよりますが、多くのホステッド型プライベートクラウドは月額費用のサブスクリプション型の料金体系で利用できます。そのため、オンプレミス型のような初期導入時の機器の調達コストや、プライベートクラウド基盤の設計・構築にかかるコストは不要となります。

導入を決めてから利用するまでの期間が短い

ホステッド型プライベートクラウドは、クラウド事業者が運用管理するクラウドをサービスとして利用します。そのためオンプレミス型に比べて、導入を決めてから利用するまでの期間が短く済むでしょう。

インフラの運用管理コストを削減可能

クラウド事業者が責任を持ってインフラの運用管理を行うため、利用者はインフラの障害やバージョンアップなどの作業を行う必要がありません。インフラの運用管理にかかるコストを削減できるメリットがあります。 

ホステッド型プライベートクラウドのデメリット

ホステッド型プライベートクラウドのデメリットは下記の通りです。 

インフラの構成に関するカスタマイズ範囲が狭い

ホステッド型プライベートクラウドは、基本的にインフラの構成をクラウド事業者が定めているため、オンプレミス型と比較するとカスタマイズ範囲が狭く、柔軟性が低いといえます。

独自のセキュリティポリシーを反映しきれない場合がある

インフラ構成と同様に、セキュリティポリシーもクラウド事業者の提供サービスによって異なるため、利用企業のセキュリティポリシーに完全に合致させることが難しいケースがあります。

 

ベアメタルクラウドが提供するプライベートクラウド

リンク ベアメタルクラウドではホステッド型のプライベートクラウドを提供しています。

専用の物理サーバー上に仮想サーバーを複数稼働させることができる簡易的な「プライベートVM」と、より大きなリソースと可用性を実現した「プライベートクラウド」を、お客さまの用途や要望に応じてお選びいただけます。

プライベートVM

プライベートVMとは、専用の物理サーバーにKVM(仮想化ソフトウェア)をインストールし、その上に自由に複数の仮想サーバー(VM)を作成することができるものです。

プライベートVM

仮想サーバーのホストとなる物理サーバーから占有できるため、他者の影響を受ける心配もありません。物理サーバーのリソースの範囲であればいくつでもVMを作成できるため、開発環境や、複数サーバーの集約などの用途に最適です。

ただし、ホストの物理サーバーに障害が発生した際には仮想サーバーを別サーバーに乗せ変えるなどの作業が発生するため、可用性という点ではやや課題があります。

 

プライベートクラウド(専用リソース)

プライベートクラウド(専用リソース)は、お客さま専用のハイパーバイザー(仮想化基板)を冗長化し、ストレージとセットで提供することで可用性を高めたものです。

プライベートクラウド

Webサービスの基盤などとして、可用性を確保しつつプライベートな環境で利用したいといったケースに最適です。

HA構成となっているため、もしホストのサーバーに障害が発生しても、その上で稼働している仮想サーバーは自動的に復旧されるため、より安心して利用できます。後からハイパーバイザやストレージのリソースの追加も可能です。

ネットワークについて

ベアメタルクラウドでは標準でクライアントVPN(PPTP/L2TP)を提供していますが、よりセキュアな接続を希望する場合にはオプションとして「拠点間VPN」と「ダイレクトコネクト」を利用することができます。

拠点間VPNは、お客さまの拠点のVPN機器と標準で提供している仮想UTMを接続するものです。IPsecで暗号化された仮想的な専用ネットワークで、ベアメタルクラウド環境とお客さま拠点のサーバやPCとのシームレスな接続を低コストで実現できます。

ダイレクトコネクトは、お客さま拠点とベアメタルクラウド環境を専用線や閉域網で接続するものです。VPNに比べ、より高品質でセキュアな接続が可能になります。

運用・セキュリティについて

サーバーの監視・障害対応・セキュリティアップデートの対応など、運用についてもオプションで提供可能です。24時間365日のサポート体制が整っているため、お客さまで運用される場合にも、休日・夜間問わず電話での問い合わせ対応が可能です。

セキュリティ対策についても、各種セキュリティソリューションを取り揃えており、ライセンスのみの提供から導入・運用の代行なども併せて行うマネージドサービスの提供が可能なため、要望に応じてお選びいただけます。

その他、お客さまの求めるセキュリティポリシーを実現できるか、そのために何が必要かなどのご相談も受けられるため、お悩みがあればまずはお問い合わせください。

まとめ

クラウドを導入する際は、企業の要件やポリシーに応じたクラウドを選択することが重要です。プライベートクラウドは、高いセキュリティを実現しながらクラウドの柔軟性・拡張性も併せ持つもので、企業が独自に構築し所有するオンプレミス型と、サービスとして利用するホステッド型に分類できます。

リンク ベアメタルクラウドでは、ホステッド型のプライベートクラウドを提供しています。専用の物理サーバー上に仮想サーバーを複数稼働させる簡易的な「プライベートVM」の利用や、基盤を冗長化し大きなリソースと可用性の向上を実現した「プライベートクラウド」の利用が可能です。その他、ネットワークやセキュリティ対策、運用まで様々なオプションを取り揃えています。オンプレミスで構築するよりコストを抑え、手間もかけずにプライベートクラウドを実現できるため、興味のある方はお気軽にご相談くださいませ。

ベアメタルクラウドの特長

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